北方稜線を歩こう「小窓尾根~剱本峰~早月尾根」 2019.8.9.-8.12.

山行部

<日程>2019年8月9日~12日
<メンバー>会員6名
<天候>晴れ

<アクセス・コースタイム> 
【9日】西宮北口21:00集合 ⇒26:00馬場島 着・車中泊
【10日】馬場島4:50 →雷岩7:50 →10:00池ノ谷分岐 →15:00高度2,000付近・幕営
【11日】出発5:00 →ニードル~ドーム~マッチ箱 →19:10高度2,600付近・ビバーク
【12日】出発5:00 →8:00三ノ窓、池ノ谷ガリー →池ノ谷乗越9:55 →長次郎ノ頭・コル→剱岳12:55 →16:00早月小屋16:20 →20:30馬場島 →26:00~帰神

【10日(金)】清々しく馬場島駐車場を出発。白萩川と並行して緩やかな車道を小一時間ほど進んだ後、川沿いにルートを変える。事前情報では渡渉は5回程度と考えていたが、尾根取付きの雷岩まで7~8回はあっただろうか。この時期でも水はキンキン、5秒も浸かると頭痛がしそう。また膝丈より上の深さで水流が強い箇所もあり、渡渉箇所を探索しながら思いの外時間を費やす。最後の渡渉後、雷岩でしばし一息。三ノ窓の雪渓までは水補給は出来ないため、ここで最終調達となる。付近に湧水ありの情報を頼りにCL・Kさんが巨岩廻りを探すも見当たらず。今更ながら川向いの岸壁に伝わる流れが見えたが戻る気も失せているため直汲みとする。ここまでの車道・沢歩きでブユらしき大群に付き纏われて何度か噛まれたがテリトリーを出たのか?いつの間にか消え去っていた。池ノ谷分岐ポイント(1,614)までは急登で太陽高度も手伝い代謝量が半端なく上昇していく。危うく池ノ谷へ下り始めていることにKさんが気付き引き返すがルートは明確でない。ここから2mクラスの笹薮を延々と進むことになる。薮漕ぎは承知の上だったが、ほとんど途切れることはなく精神的なダメージは想像以上。結果的に翌行程の2,500付近までほぼ激薮で疲労困憊することに。無理矢理、高度差で例えるなら、高座の滝から六甲山頂までずっと薮漕ぎといったところ。2日間に渡りルートファインディングされたSL・NさんとSさんには大変感謝です。15分漕いでは15分薮に倒れ込む、を繰り返し少々フラットな2,000付近に到達。誰も起き上がれず全員一致でこの場での幕営決定!!薮で50cm浮いたテント設営は初めてでしたが速攻で寝付けました。流れの早い雲の合間から明日着くはずの剱岳が大迫力でアピールしている。予定とは程遠く辿り着ける気がしない。

【11日(土)】行程より400m低い地点からスタート。薮は影をつくるどころか届いた日射熱を逃がさないサンルームのような状態。先行者によってきれいになぎ倒れた笹は非常に滑り易く、思うように進まず余計に体力を消耗してしまう。キックステップで片足を笹の隙間に固定しつつ、笹を両側に束ねて手で掴み3点支持で這い上がっていく。少し足を止めてしまうと、高い笹が邪魔をして先行者のかき分ける薮の動きも見つけづらく、自らルートファインディングする羽目に。高度を稼ぐにつれ今度は縦横無尽に走る中低木もミックスされ難易度が上げる。ザックを外さないと抜け出せないほどのジャングルに嵌り、方々で驚嘆の声が出る。通常は1時間で高さ300m程度を目安とするところ、この薮では50mも進むかどうかのペース。三ノ窓まで着くとは思えない焦りと飲料水が底をつくという不安でストレスが増大していく。経験のない過酷さで口呼吸になり余計に水分が失われていく。2,100付近からニードル、ドームといった岩稜帯に当たる。ハイマツが足元を纏わりつき結構なアップダウンが続くが、薮地獄からの解放感に一時安堵する。しかし今度は日射地獄に切替る。直射熱と岩からの反射熱、日陰が見つからない絶望感と戦いながら無言で足を進める。今更、地獄尾根をエスケープすることも出来ない。少し標高を下げると藪が復活してくる。結局2,500あたりまでは藪と草木との格闘が続いた。マッチ箱、ピラミッドピークといった岩峰をクリアした後、2,600で忘れかけていた登山道に出会う。しかし日もかなり落ちてしまい、三ノ窓まで順調に行って2時間半は掛かる見込み。途方に暮れていた時、Sさんが小さな雪渓を見つけビバーク提案。この時、全員がほぼ水を切らし、続きの行程は雪渓トラバース・懸垂下降と危険だったため結果的に正解。雪渓上部の斜面にへばり付く形で、2時間かけて全員分の水づくり(12㍑)を行いながら交代で食事。今回も食担はOさんのお世話に。美味しいだけでなく歩荷負担まで考えて頂いた配慮に感服です。今夜はこれで落着けると安心したが甘かった。各々分散して小さな段差や窪みを見つけてツェルトやシュラフに包まるが、油断すると斜面を滑り落ちることも。また虫地獄が復活。ヤブ蚊のほか小さな虫がシュラフの中へ入り込み、ヘルメットの中まで容赦なく咬む。あとで聞いた話しではヌカカという糠粒のごとく微小なハエの一種らしく、防虫ネットをすり抜ける厄介もの。諦めてシュラフを外すと満天のアルプス

【12日(月)】鹿島槍・五竜岳の見事な朝焼けを拝んでリスタート。まずは小窓の王基部を目指す。すぐに微妙な幅・傾斜の雪渓に遭遇。トラバース是否で少々議論した結果、高巻きを選択。ここにきて初めて別パーティに出会う。その後も、すれ違う面々に「小窓尾根から来た」と説明するも、どこそれ?といった顔。基部に出るとダイナミックな北方稜線が迎えてくれる。三ノ窓へ下るバンド(通称、発射台)から懸垂下降。折り返してからの池ノ谷ガリーは自然落石多発のためノンストップと言われますが、150m以上のガレ場で蟻地獄のようにズルズルと足場が動くため無理。チンネ側が歩き易いとの情報が多かったが、実際は九十九折りで適宜、次の小休止ポイントを見つけながら慎重に池ノ谷乗越まで。ここで一息つくも両壁からの落石が頻繁で一切油断できない。池ノ谷頭からクライムダウンしてくる対向者が途切れ次第、岩稜歩きを開始。稜線では常に長次郎ノ頭、剱本峰が屹立、迫力ある姿に引き寄せられる。長次郎は頭越えすると懸垂下降があるらしく、長次郎谷側を巻いて進む。高度感のある岩壁トラバースがいくつかあり緊張感が抜けない。古びたハーケンに固定されたお助けロープも遠慮なく利用する。Nさんが終始、確実慎重にルート選定されたお陰で、体力と時間の消費は最低限に劔本峰へ。賑やかになっていく山頂を早々と後にして早月尾根を駆け下る。昨夜暗闇でつくった命の水は、よく見ると雪渓に混じっていた葉っぱと泥と小虫(ヌカカ??)でタピオカのようになっている。まずは早月小屋で澄んだコーラが飲みたい、そのモチベーションで3時間かけて到着。しかし無情にも売切れ、炭酸はビールだけと宣告される。思案する間もなく下山することに。ここからは45分歩いて5分休憩のインターバルを徹底。途中、眠気で意識朦朧としながらも全員無事に馬場島へ帰還。本当にお疲れでした。
初日から脱水症状を起こし、自分の担架を皆さんに引受けて頂き大変ご迷惑を掛けました。終始ペースを守れない中、フォローして頂いたメンバーの皆さまに感謝します。今回、単に準備・対策不足という事だけではなく、山行への向き合い方を考える意義深い経験となりました。(S 記)
<特記事項>
無雪期の「小窓」尾根は名前ほど可愛くない。
年々、踏み跡は減り藪は成長し続けているため、過去の情報だけを参考にするのは危険。
計画書との相違については、CLよりヒヤリハットとして県連へ報告済。