弥山尾根東稜 2023.2.12

日時:2022年2月12日(日)
参加者:会員2名
天気:晴れ
行程:元谷避難小屋出発5:30→6:00 東稜取付→13:30 弥山頂上→15:00 元谷避難小屋

 弥山尾根東稜をユーチューブで検索すると、気が滅入るような敗退の動画を見てしまった。
土曜日に元谷避難小屋で佐々木さんが出会ったボルダリングの友人の話では、弥山尾根東稜にチャレンジしたが、昼前に撤退を決めて懸垂下降で降りてきたとのことで、「僕らも敗退か」という思いでテンションダダ下がりの土曜日を過ごした。
 日曜日は4:00 起床、西稜チームの4 人とともに5:30 出発。西稜の取付手前で僕ら2 人は東稜へ向かった。正規ルートは尾根の右(西)側が取付だが、知人の話やユーチューブの情報から僕らは尾根の左側へ回り込んで易しそうなところを探してみた。
 まずは試しに僕から取付いてみたが、情報通り雪が柔らかくてアックスもアイゼンも決まらない。撤退覚悟で少し場所を変えてもう1度トライしたら、今度は何とか2m程登れたので撤退する訳にもいかずそのまま登ったが、支点を取れる岩もなく、小指程の太さの小枝にスリングを掛けて気休めの確保をしながら登り続けた。
 スリリングなトラバースや握りしめた小枝に全体重を預けてのごぼう抜きで登ったりして心身ともに疲れ果て、稜線に出るまでの約50mを登りきることができず、下部岩壁が終わった急傾斜の雪面の途中の木でピッチを切って佐々木さんに代わってもらうことにした。
 「あと10m程で稜線に出るけど、その上部も難しそうなら撤退しよう」と話し合い、佐々木さんに2 ピッチ目を登ってもらった。稜線の向こうに佐々木さんの姿が消えた後、ロープが動かなくなったり、急に引き上げたり下ろしたりと不穏な動きで行動が読めない状況が続き、無線で何度も呼び掛けたが返答もなく、やむなく登り始めると途中の木の枝に無線機が引っかかっているではないか!
 稜線に出ると、僕らが回避した右側の正規ルートを登ってきた人たちがいた。テンションは最低だが、人が登っているのに自分たちだけ撤退する訳にもいかず、しかたなく登り続けることにした。
 その後は無線機の調子が悪く、ロープの引きだけで状況を判断して意思疎通に多大な時間を要した。
また、途中で他のグループの女子1 名が狭い稜線上でおしっこをしたくなり、あとのパーティーが待たされるというハプニングもあり(佐々木さんの話ではパンツは赤だった)精神的に疲れさせられる登攀が続いた。急斜面での柔らかい雪にずり落ちることも多々あり、信頼できる支点を作れる木もほとんどなく、前日に練習したスタンディングアックスビレーやスノーバーを駆使しての登攀が続いた。
 13 時半に登攀終了。撤退覚悟の最低のテンションからよくぞ頂上までたどり着けたものだという達成感は半端ない。頂上で僕らはハグをして達成感を共有した。
 西稜チームに連絡すると既に13 時に元谷避難小屋に戻ったとのこと。「先に下山してお風呂にでも入って駐車場で待っていて」と伝えて下山を開始した。
 15 時に避難小屋に着くと、4 人の仲間が待っていてくれて「おめでとう」と迎えてくれた。何といううれしいサプライズだろう。(毛戸)

<特記事項>取付までの元谷、弥山沢は雪崩に注意。西稜取付から東稜取付までのトラバースは特に気持ち悪い。1 ピッチ目が核心部。急傾斜で支点を取れる所がない。先行者が落とす雪や氷に注意。直撃を受けるとケガをする。

前夜泊でお世話になった元谷避難小屋