日時:2023年9月15(金)〜18日(祝月)
参加者:会員4名
天気:晴れ後雨(16日)、晴れ(17日、18日)
アクセス:JR三宮なか卯前20:00⇒飛騨清見IC→25:00平湯高山タクシー駐車場(仮眠)
コースタイム:(9月16日)高山タクシー駐車場5:30⇒上高地6:00→横尾9:00→水俣乗越12:30→北鎌沢出合14:30
(9月17日)北鎌沢出合4:30→北鎌コル7:00→独標10:30→15:20槍ヶ岳→槍ヶ岳山荘16:30→宿泊地
(9月18日)ババ平5:00→横尾6:50→上高地10:0⇒帰神
記録によるとこのルートは6年ぶりの例会実施のようです。今回は、同ルートの経験者の居ないメンバーで挑戦しました。実施に当たっては心配された先輩方も居られたかと思います。幸い、お天気と良いメンバーに恵まれて、楽しく実ある山行ができたと感謝しています。
<ルート上のポイント>
・北鎌沢向けてザレ谷の降下600m(天上沢ルート):はじめの50Mほどが激下りです。その後も、下っても下ってもまだまだ続き、神経を使いました。
・水場:貧乏沢へ向けて10分ほど下ると、湧き水があります。この水場が無いとピンチでした。
・テン場:当初「北鎌のコル」で野営予定とし、2人テント2張準備していました。しかし、北鎌沢出合の野営適地に着き、水の確保や600Mの激登りルートを見るうちに「萎え」断念します。翌日、稜線上の“テント適地“を通過しながら沢の出合で野営するのが正解だった実感しました。
・出発時刻を30分遅らす:チームの実力を考え最後部を歩くことを選択しました。午前4時半、ヘッテンを点けてスタート。
・「北鎌沢右俣」のルーファイ:右、右、右、左と俣を選びます。最後の俣を右に行くと「クライマーズホイホイ」に迷い込み前後不覚に陥りますので注意しました。
・「天狗の腰掛け」P9、2749mまで:崩落場所の通過で足下が空洞になっている箇所があります。それ以外、踏み跡が明瞭でルートを外すことはありません。展望は少なくブッシュ帯を登下降します。
・「独標」P10、2899m手前まで:目の前に「独標」が見えるルートになります。高度が上がり、展望も開き周囲の山を楽しめます。ここでは下りのザレ場通過に神経を使いました。基本、稜線伝いにルートを取りますが、ところどころ千丈沢へトラバースする分岐があり注意が必要です。
・「独標」:一つ目の核心部。先行パーティーは直登ルートを選択していました(後で聞くとロープを出したそうです)が、私たちは絶壁の中ほどにあるトラバース道を行きます。危険個所にフィックスが設置されており安全に通過できました。以前は「逆コ」の通過が難関でしたが、地震で上部が崩落し難易度が下がっています。独標頂上に上がると目指す「槍ヶ岳」が眼前に大きく聳え立ちます。「北鎌に来た」と実感できる瞬間でした。360度の展望もあり「大休憩」としました。
・P13、2873mまで:「独標」からの岩稜帯は想像していたよりも、アップダウンがありました。また、ブッシュがなくなり、ルートも不明瞭になりルーファイ力が試されます。周囲を見るとルートらしい踏み跡がありますが、セオリー通り「稜線部」をできるだけ踏破していきます。下降部では浮石、ザレに足が取られないように注意しました。メンバーみんな良い緊張感です。YouTUBE動画で見るような「高度感」はありません。一か所、事前情報にない懸垂ポイントが現れ、渋滞しています。私たちはCLの判断でクライムダインを選び、横を“お先に”通過しました。このボルトはガイドツアー用なのかと想像します。
・P15まで:通称「白ザレ」と呼ばれるP14のピークを越えていきます。名前の通り白い岩肌でザレザレです。そして、P15には有名な「諸君頑張」のプレートと懸垂ポイントがあります。ここもクライムダウンを選択しました。ただ、しばし休憩を強いられます。原因は懸垂に手間取る先行者。懸垂が初めてなのか見てると問題が多く危険だなと。お願いです、入山する前に練習してください。
・北鎌平:「よくここまで来れたな」という安堵感から緊張が解けそうですが、「いよいよクライマックス、槍ヶ岳への最後の上りです」。そう、このルートにはラスボスのチムニーが待ち構えています。
・滑落事故を目撃:休憩をしているとロープが擦れる音とともに岩が崩落。人と土埃を舞い上げ、大音響とともに谷底に落ちていきます。下を見るとリュックが遅れて転がり落ちていました。心臓が止まりそうな衝撃です。*この後、救命ヘリが到着し滑落者は一命を取り留めたと伺いました。
・最後の上り:あまりの出来事に立ちすくみましたが、CLから「前を向いて行こう」と声が掛かり、現実に戻り出発しました。1時間ほど踏み跡が分かりにくい大きな岩を乗り越えていきました。要所に「ケルン」があります。これは有難い目印でした。ほどなく「チムニー」の下部に到着。先行者で渋滞しています。CLがリードし、上から指示やスリングを出してくれて難なくクリアです。
・山頂の祠裏に上がる:山頂は多くの人で賑わっていました。そして、バリエーションの世界から離脱していきました。
<気づきと備忘>
今シーズン最多の入山者を迎えるだろうとの予測通り、沢渡、アカンダナ駐車場は満車状態となっているとタクシーの中で話しを聞きました。今回、バスではなくタクシーを予約しての移動です。平湯温泉から「高山タクシー」の専用駐車場を利用し定額乗合タクシーの利用、料金も割安で待ち時間などが無くスムーズに上高地に入れました。(お勧めです)到着したバスセンターは多くの登山者で溢れていました。リュックを整え出発したいところですが、早々に私は便意をもよおしトイレに、男性トイレの方が長蛇の列です。協力金100円を投入し並んだのはよいが、一向に前に進みません。困った。ここのトイレ以外に小梨平などにもあるので我慢すればよかった。しかし、100円入れたし。結果、皆を待たせることになりました。
横尾まで足早に移動します。途中「熊ベル」が2カ所設置してありました。また、横尾に着くと涸沢の渇水情報が掲示されています。今年はどこも水不足です。この先「槍沢出合の水場」が枯れていないか心配になりますが、余分に水を歩荷する気力は湧きません。
大曲からの登り、水俣乗越で出会う登山者は、漏れ聞こえる話しから「みな北鎌を狙っている」ようです。ガイド連れのパーティーも北鎌へ。もしかして北鎌は人気コースなのだろうか?北鎌沢出合のテント適地に着くと、テントが沢山張ってありました。40名以上のクライマーが明日、北鎌を目指すようです。渋滞が予想されます。午後3時過ぎに北鎌のコル上空で救急ヘリがホバリング。爆音だけで詳細が分からないのが、間違いなく事故発生です。(後で滑落事故と聞きました)ワイワイ話した夕食後、明日の出発時間は30分遅らすことにしました。私たちが渋滞の原因になると申し訳ないし、追われる焦りから滑落もしたくなりません。また、先行者がいることはルーファイにも役立ちます?実際は詳細なルート情報は不明なので、都度ルーファイをしながら前進していきます。今回は先頭を行くCLが適格に判断しミスはありません。また、参加メンバーは事前準備として自主山行、情報収集を行い、情報交換にも努めました。準備に万全はありませんが、山行中協力し、支え合いながら危険回避を最後まで継続できたと思います。北鎌は技術的な難易度は高くありませんが、ルートが長く「体力とルーファイ力」が求められます。途中、ガイド登山のメンバーがザレ場で足を滑らせ滑落寸前でガイドが止める場面に出会いました。一つのミスが命取りとなる危険な場所にいることは間違いありません。
今回「敬老の日」に高齢者の私は参加させていただきました。若い人の足手まといにならずに何時まで登れるだろうか?と考える一方、「槍の穂先」を目指したように頑張ればまだまだ行けそうな気がしています。
最後に、メンバーと槍ヶ岳山荘前で「エアーハグ」をして互いに無事をよろこび合いました。達成感のある良い山行です。(Ge)
<コース状況>バリエーションの為、マーカー、道標など整備されていません
<特記事項>CLが持参したロープは最後まで出番はありませんでした